備えあれば災い(わざわい)なし

自然災害や日常生活に潜むさまざまなリスクへの備えについて考えます

過去の地形と地名でわかる災害に脆弱な場所

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地図を見ると、「池」とか「沼」などが付いた地名が全国各地に点在しています。

こうした場所の多くは、古くは池であったり、沼であったところです。
つまり、水が集まりやすく、大雨が降ると洪水や浸水などの被害が起きやすい場所であると言えます。

では、災害に関連しそうな地名にはどのようなものがあるのでしょうか?

そして、先人が地名に残したメッセージを私たちはどう活用すればよいのでしょうか?

 

 

災害と地形には密接な関係がある

 

日本は災害王国です。
地震、津波、洪水、高潮、土砂災害など、毎年のように全国あちこちで災害が発生しています。
そのような災害が発生した場所をよく見ると、あることに気づきます。
それは、災害と地形の関係です。

昭和22年9月のカスリーン台風では、関東地方を中心に死者1,100名、家屋浸水約30万戸におよぶ甚大な被害が発生しました。この時、被害が大きかった利根川・江戸川において本格的な洪水調査が実施されましたが、堤防の決壊により氾濫した洪水は、旧河道(昔は河川であったところ)に沿って流れ下り、旧河道や後背湿地(沖積平野にある低平・湿潤な地形のところ)では浸水が多く、自然堤防では小さいなど、地形の分布と水害には密接な関係があることがわかりました。

カスリーン台風で大きな被害を受けた利根川も、かつては東京湾に流れ込んでいましたが、江戸時代に行われた河川改修工事により、現在では千葉県の銚子に流れ下っています。こうして河川の流路が大きく変わったために、もともと河川であったところが現在では宅地になったり、工場が立地したりしているのです。こうした旧河川のところで被害が大きかったというわけです。

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出典:国土地理院ホームページ(http://www.gsi.go.jp/common/000190162.pdf

 

国による水害地形分類図などの作成・公表

 

このカスリーン台風の被害を受けて、当時の総理府は、「水害地域に関する調査研究」を各地で実施しました。その調査研究の成果の一つが日本で最初にできた水害地形分類図「木曽川流域濃尾平野水害地形分類図」(S31刊行)です。

水害地形分類図とは、洪水被害を受けやすい地域の地形を分類し、分類された地形とその組み合わせから、どのような洪水が起きる可能性があるか、その状態を推定する地形図です。

この水害地形分類図の刊行から3年後の昭和34(1959)年9月に伊勢湾台風が来襲し、濃尾平野の沿岸部が甚大な高潮被害を受けましたが、被害を受けた地域が、「木曽川流域濃尾平野水害地形分類図」で整理されたものとほぼ一致したため、将来に向けて災害予測図としての有用性が注目されました。

その後、昭和51年の台風17号による長良川の破堤で大きな被害を受けたことを契機として、「治水地形分類図」が作成されました。治水地形分類図は、国が管理する河川の流域のうち主に平野部を対象として、扇状地、自然堤防、旧河道、後背湿地などの詳細な地形分類が示されており、洪水ハザードマップなどと併せて見ることで、洪水など災害の危険性を知ることができます。

 

過去の地形は、災害リスクを知るための重要なヒント

 

つまり、過去の地形を知ることで、水害の発生しやすい場所を知ることができるということです。これは水害に限らず、土砂災害や地震による液状化などにも有用な情報となります。

広島県において2014年、2018年と相次いで発生した土砂災害を見ても、被害を受けた地域は、広島市の北部に位置し、急斜面を切り開いて山麓部まで宅地開発が急速に進んでいる地域です。かつては、山の斜面あるいは田畑であった地域なのです。

地震による液状化被害なども、臨海部の埋め立て地などでは一目瞭然です。こうした地盤の軟弱なところに高層ビルが建ち並んでいるんです。

 

過去の地形と地名で危険な場所を知る

 

過去の地形を如実に示すものに「地名」があります。
政府広報によれば、

 地名には、その地に起きた災害の歴史や特徴を、現在に伝えるメッセージが隠されていることがあります。たとえば、過去に大きな洪水が発生して家屋が流されてしまったり、がけ崩れなどの土砂災害が発生した土地では、特徴的な文字が使われていることが多く見られます。また、開発によってわからなくなってしまった土地の高低、埋め立てられてしまった海岸線や池、川などを地名から知ることができる場合もあります。また、地名に災害発生自体の意味合いがなかったとしても、その読みに意味が込められている場合もあります。自分の住む土地の名前の意味を知り、過去の災害の歴史を知ることは、災害対策をする上で非常に重要なヒントになります。

 水に関係する文字「川」「池」「浜」「津」「洲」「浦」「沢」「湧」などはもちろん、「浅」「深」「崎」「戸」「門」「田」「谷」なども海岸線や川の近く、低地、湿地帯などをあらわしていて、過去の津波到来や台風、豪雨などの増水時には大きな被害があったと考えられます。また「蛇」「竜」「龍」などが使われている地名には過去に大規模な土砂災害が発生しているケースが多く「蛇抜」「蛇崩」などの地名は土砂が流れていく様をあらわしているとされています。また増水時に川が蛇行して荒れていく様を、空想上の「龍」に見立てて地名としている場所は全国に見られます。

 わかりにくいケースとしては災害とはおよそかけ離れているような動物や植物などの地名が災害の発生をあらわしている場合もあります。「牛」「猿」「鷹」などの動物や「梅」「栗」「柿」などの植物もその地に起きた災害を示している場合があります。実は、地名に込められているメッセージは、使われている地名の文字そのものではなく、その「読み」に本来の意味があり、全く別の漢字が当てられているというケースも数多く見られるのです。

 「牛」の読みの「ウシ」は「憂し」という古代語の意味を持ち、不安定な土地をあらわすもので、過去の地すべり崩壊地や洪水の氾濫地、津波の常襲地域に名づけられている場合があります。「猿」の読みの「サル」は「ズレル」の意味を持ち、崖状の地すべり地、滑った土地の溜まり場の意味を持っています。「鷹」は「滝」の意味を持ち、急傾斜地・崩壊危険区域を示します。また「梅」の読みの「ウメ」は「埋める」の意味を持っていて、埋立地であったこと、土砂崩れの土で埋まったところを示しています。「栗」の「クリ」は刳る(えぐる、穴を開ける)の意味を持ち、同様に「クル」「クレ」「クロ」の読みを持つ「久留」「来」「呉」「暮」「黒」などの地名は土地の浸食や崩壊地を示していて、「柿」の読みの「カキ」は「欠ける」という意味で崩壊地や崖の意味を持っています。また「カミ」「カメ」「カマ」「カモ」などの読みを持つ「上」「紙」「神」「亀」「釜」「鎌」「鴨」「加茂」などは古語の「噛む」「削れて土地がなくなる」の意味を持ち、浸食・崩壊地域、洪水や津波などの自然災害が起きた場所を示している場合があります。いずれもそれぞれの土地で、いくつもの説が唱えられている場合があります。

出典:政府広報ホームページ(みんなの力を、防災の力に。-地名があらわす災害の歴史

 
このように、私たちが住んでいる地域の地名を知ることが、過去の災害史をひもとき、災害への備えをするために非常に有用な情報となります。

これからマイホームを構える方は、購入予定地の過去の地形や地名にも着目していただき、災害のリスクを踏まえた検討をしていただくと良いと思います。治水地形分類図、ハザードマップは、国土地理院、国土交通省のホームページでそれぞれ確認することができます。

先祖を祭る神社や仏閣が、水害を受けにくい場所に建てられていることが多いことも、先人たちの知恵によるものでしょう。

 

ではまた。